1. 床矯正とは何か?基本をわかりやすく解説
1-1. 床矯正の定義と目的
スマナビ先生「床矯正(しょうきょうせい)って、よく聞くけど実際どんな治療なの?」と、初めて耳にした方は不安や疑問がたくさんあると思います。
床矯正とは、床装置と呼ばれる取り外しができる装置を使って、あごの骨の幅を広げたり、歯がきれいに並ぶためのスペースを作ったりする矯正方法です。特に、小学生などの成長期の子どもに適応されることの多い治療法です。



この治療は、将来的に抜歯をしなくても良いように、あごをゆるやかに広げて、自然に歯が並ぶスペースを作ってあげることを目的に行われることが多いです。



床矯正=拡大
というイメージが定着しています。しかし、広い意味では床装置を使う治療手段全般のことを指すので、拡大を行わない場合ももちろんあります。
ここでは、拡大を用いた床矯正にフォーカスして説明します。
1-2. ワイヤー矯正やマウスピース矯正との違い



一般的にイメージされる「矯正」といえば、歯にワイヤーをつけるものや、透明のマウスピース型の装置ですよね。
それらと床矯正との一番の違いは、骨の幅を広げることが主な目的となることが多い点です。
• ワイヤー矯正:歯を少しずつ動かして並べる。すでに永久歯が生えそろってからが中心。
• マウスピース矯正:透明で目立たないが、歯の位置を変えるのが中心。大人向けが多い。
• 床矯正:骨の成長を利用して、あごを広げる。子どもの成長期に効果が出やすい。
1-3. 「床装置」ってどんなもの?



「床矯正って言うけど、“床”ってなに?」と思う方も多いと思います。



ここでいう「床(しょう)」とは、入れ歯のような形をした小さな装置のことです。上あごや下あごにフィットするように作られています。



装置の真ん中には、ネジのようなパーツがついていて、少しずつネジを回すことで、装置が左右に広がり、あごの骨も広がるように誘導していくという仕組みになっています。
お子さん本人でも取り外せるので、歯磨きの時に外せて衛生的というメリットもありますよ
2. 子どもの歯並びが悪くなる原因とは?
2-1. 遺伝だけじゃない?生活習慣との関係



「うちの子の歯並び、やっぱり遺伝かな…?」
そう感じる親御さんは多いですが、実は歯並びが悪くなる原因は遺伝だけではありません。むしろ、生活習慣や日常のクセが大きく関係しているケースがとても多いんです。
たとえばこんなクセ、心当たりありませんか?
• 指しゃぶりや舌を前に出すクセ(舌突出癖)
• 口をぽかんと開けている時間が長い
• うつぶせ寝や頬杖をよくする
• 柔らかいものばかり食べていて、あまり噛まない



これらのクセは、あごの発達を妨げたり、歯の並ぶスペースが足りなくなる原因になります。
つまり、日々のちょっとした習慣が、将来の歯並びに大きく影響してしまうんですね。
2-2. 早期発見のポイントと見逃しやすいサイン



では、子どもの歯並びの異常にどうやって気づけばよいのでしょうか?
以下のようなサインがあれば、一度歯科で相談するのがおすすめです。
• 歯がガタガタに生えてきている
• 永久歯が出てくるスペースがなさそう
• 噛み合わせがズレている(前歯が深く噛み合いすぎる・逆に下の歯が前に出ている)
• 口呼吸をしている



とくに永久歯が生え始める6歳〜8歳くらいの時期は、矯正を始めるかどうかを考えるベストタイミングです。「今が始めどきかどうか」を見極めるためにも、この時期の観察はとても大切です。
2-3. 放置するとどうなる?将来のリスク



子どもの歯並びの問題を「そのうち自然に治るかも」と思って放っておくと、あごの骨の成長が終わってからでは治療の選択肢が狭まる場合があります。
放置することで起こりやすい問題には、以下のようなものがあります:
• 将来、抜歯をしないと矯正できなくなる場合がある
• ワイヤー矯正など大掛かりな治療が必要になる場合がある



早い段階で床矯正を行うことで、成長する力を利用して自然に近い形で治していくことが可能になるケースも多いです。ただし、子供の頃に治療しなかったらかといって、歯並びを治せなくなるわけではないので、この点は慎重に判断してください。また、子供の頃に矯正をしたからといって必ず抜歯が必要なくなるわけでもありません。


3. 床矯正のメリットとデメリット
3-1. メリット:痛みが少ない?取り外し可能?
床矯正には、他の矯正方法にはないメリットがたくさんあります。親御さんとしては「続けられるの?痛がらない?」が気になりますよね。
✅ 取り外しができるから清潔&負担が少ない
床矯正の装置は、自分で取り外せるのが大きな特徴です。
食事や歯みがきの時に外せるので、虫歯になりにくく、歯みがきもしやすいです。これは固定式のワイヤー矯正と比べると大きな利点ですね。
✅ 痛みが少なく、慣れやすい
装置のネジを少しずつ回してあごを広げていくので、急激な力がかかりません。
そのため、痛みが少なく、子どもでも慣れやすいです。「床矯正とはどんなものか?」と不安な方も、始めやすい治療法といえるでしょう。
✅ 抜歯を避けられる可能性が高まる
歯並びを整えるスペースが足りないと、将来的に歯を抜く矯正が必要になることもあります。



床矯正であごの幅を広げておけば、永久歯が自然に並ぶためのスペースを作れるので、抜歯をしないで済む可能性がひろがります。
3-2. デメリット:効果が出にくいケースとは?
❗ 装置の使用が本人の管理に左右される
取り外せるメリットの裏には、「つけ忘れると効果が出にくい」というリスクもあります。
1日12〜14時間以上装着する必要がありますが、お子さんによってはつけるのを忘れがちになったり、嫌がることも。
❗ 重度の歯並びの乱れには対応しきれない場合も
床矯正は“あごの幅を広げてスペースを作る”のが得意な治療法です。
ですが、すでに歯が大きくズレている場合や、上下の噛み合わせのズレが大きいケースでは、他の矯正方法と併用したほうが良いこともあります。
3-3. 他の治療法と比べたときの費用・期間



矯正治療と聞くと、「費用が高いんじゃ…」「どのくらい続くの?」という心配もあるかと思います。床矯正の特徴を他の方法と比べながら見てみましょう。
| 項目 | 床矯正 | ワイヤー矯正 | マウスピース矯正 |
|---|---|---|---|
| 開始時期 | 6~10歳頃(成長期) | 永久歯が生えそろってから | 中学生~大人向けが中心 |
| 期間 | 1〜2年程度(症例により変動) | 2~3年程度 | 1~2年程度 |
| 費用目安 | 約20~40万円 | 約70~100万円 | 約80~100万円 |
| 特徴 | あごを広げることが多い・取り外し可能 | 固定式・歯を動かす | 目立たない・自己管理が必要 |
※料金や期間はクリニックやお子さんの状態によって異なります。あくまで目安としてご覧ください。
4. 床矯正が必要な年齢とタイミング
4-1. 最適な開始時期はいつ?
最もおすすめのタイミングは6歳~10歳頃です。
この時期は、まだ乳歯と永久歯が混ざっている「混合歯列期(こんごうしれつき)」で、あごの骨がやわらかく、成長も活発。この時期にスタートすることで、装置の効果が出やすくなります。
特に、こんなお子さんには早めの相談がおすすめです
• 前歯がガタガタに生えてきた
• 奥歯に比べて前歯のスペースが狭い
• 永久歯がなかなか生えてこない
• 歯並びよりも「あごが小さいかも?」と感じる
4-2. 何歳までに始めないと意味がないの?
「もう10歳だけど、遅いかな…?」と心配される親御さんも多いですが、あごの成長が終わる前ならまだ間に合います!また、床矯正にこだわらなければ、あごを拡大する方法は他にもあるので、まずは歯科医師に相談してみてください。
一般的には、男の子なら12歳前後、女の子なら10〜11歳頃までが、床矯正の効果が出やすい時期の目安です。



もちろん個人差はありますので、年齢だけで判断せず、歯の状態や成長のスピードを見ながら判断することが大切です。
5. 実際の治療の流れと費用の目安
5-1. 初診から装置装着までのステップ



床矯正に興味はあっても、「実際にどんな流れで治療が始まるの?」と不安な方も多いですよね。
ここでは、一般的な治療のステップをわかりやすくご紹介します。
🪥 ① 初診相談
まずは、歯並びに関する相談からスタートします。
歯やあごの状態を見ながら、「床矯正とは何か」「お子さんに合っているかどうか」などを丁寧に説明してくれるクリニックがほとんどです。
📷 ② 精密検査
床矯正が必要と判断された場合は、歯型取り・レントゲン撮影・口腔内の写真撮影などを行い、あごの成長状態や歯の並びを詳しく調べます。
🦷 ③ 治療計画の説明
検査結果をもとに、どのくらいの期間で、どんな装置を使うか、費用はいくらくらいかといった具体的な説明があります。このときに不安や疑問は遠慮せずに聞いておくのがポイントです。
🛠️ ④ 床装置の作製・装着
オーダーメイドで装置を作っていきます。完成後、歯科医院で実際に装着し、使い方や取り扱いについて説明を受けます。ここから本格的な治療スタートです!
5-2. 通院頻度と治療期間の目安
• 通院の目安:月に1回程度
• 治療期間:1年〜2年ほど(症状や開始時期によって変わります)



治療が早く終わるかどうかは、お子さんが装置をしっかり決まった時間つけられるかにも大きく左右されます。親御さんのサポートがとても大切になりますね。
5-3. 費用の相場と保険適用について
💰 床矯正の費用相場(目安)
• 初診・検査費用:5,000円〜2万円程度
• 装置代・治療費用:20万円〜40万円程度
• 調整料(毎回の通院時):3,000円〜5,000円程度
※症例や装置の種類によって、上下する場合があります。
❌ 保険は使えるの?
残念ながら、床矯正は基本的に自由診療(自費診療)です。
ただし、先天的な疾患や特殊なケースでの矯正には、保険が適用されることもあるため、気になる方は医師に相談してみてください。
💡 分割払い・医療費控除もチェック
多くのクリニックでは分割払いにも対応しており、無理のない支払い計画を立てることが可能です。また、年間10万円以上の医療費がかかった場合、「医療費控除」の対象にもなります。確定申告で税金が戻ってくるケースもあるので、領収書は大切に保管しておきましょう。


6. 子どもが嫌がったらどうする?親ができるサポート法
床矯正は、装置を毎日一定時間つけることがとても大切です。でも、実際に始めてみると「うちの子が嫌がってつけてくれない」「違和感があるみたいで外したがる」という声も少なくありません。
6-1. モチベーションを保つ声かけ



子どもは「なぜ矯正をしなきゃいけないのか」がピンときていないことが多いです。ですので、小さな子でもわかるように「目的」や「変化」を伝えることが大切です。
💬 効果的な声かけの例
• 「○○ちゃんの歯、もっときれいに並ぶと笑顔がもっと素敵になるよ」
• 「がんばったら、あと何ヶ月で終わるかもしれないね」
• 「毎日ちゃんとつけてるね!すごいよ!」
6-2. 生活リズムや食事で気をつけたいこと



床矯正の装置は、基本的に食事と歯みがきのとき以外は装着しておく必要があります。そのため、生活の中に“つける習慣”を組み込むことがカギになります。
💡 装着の習慣づけ例:
• 起床後すぐ装着 → 朝ごはんの前に装着する習慣
• 学校から帰ったらすぐつける → 勉強や宿題の時間に装着
• 就寝前にもう一度チェック → 寝る前は必ず確認



また、装置をつけたままおやつを食べたりすると、装置が壊れたり汚れたりする原因になります。装置を外すときはケースに入れる習慣もセットで教えてあげると◎です
学校でも装着する必要があるか、歯科医師に確認しておきましょう!
。
6-3. よくあるトラブルとその対処法



床矯正の治療中によくあるトラブルと、その対処法も知っておくと安心です。
🔧 装置が痛い・違和感がある
→ 最初の数日は慣れるまでに違和感があることも。強い痛みが続く場合は、装置の調整が必要なこともあるので歯科医院へ連絡しましょう。
😫 子どもが装置をすぐ外してしまう
→ 無理に怒るのではなく、「何がイヤだった?」と原因を聞き、親身に寄り添う姿勢が大切です。場合によっては装着時間を少しずつ伸ばしていく工夫も有効です。
🧼 装置が汚れてしまった
→ 基本的にはぬるま湯と歯ブラシで優しく洗浄。市販の装置用洗浄剤を使うのもおすすめです。
7. よくある質問(Q&A)



床矯正について説明を受けたあとでも、「これってどうなんだろう?」と細かい疑問が出てくるものです。
7-1. 痛みはどのくらいありますか?



多くのお子さんが「最初は少し違和感があったけど、すぐ慣れた」と言います。
床矯正は装置を少しずつ調整していくので、急に強い力がかかることはありません。そのため、ワイヤー矯正よりも痛みが少ない傾向があります。
ただし、装置の端が頬や舌に当たって痛いときは、遠慮なく歯科医院に相談してください。少し削ったり調整したりするだけで楽になることが多いです。


7-2. 毎日どのくらい装着すればいいですか?
学校や習い事の関係で日中つけられない場合は、帰宅後〜就寝中までしっかりつけることで補うことも可能です。



装着時間が足りないと、期待した効果が出にくくなるため、「がんばった日にはシールを貼る」など、お子さんのやる気を保てる工夫も大切です。
7-3. 学校でつけていても大丈夫?



お子さんや学校のルールによって異なりますが、基本的にはつけたまま登校してもOKです。むしろ使用時間を確保するために、できるだけつけて欲しいところです。
ただし、話しにくさや違和感が気になるお子さんもいますので、無理に学校で装着させるのも考えものです。



装置をはずしている時間は、歯並びが戻っていることも多いので、できる限り長めの使用がおすすめです。
7-4. 装置が壊れたり、なくしたらどうすればいい?
装置が破損したり、うっかり失くしてしまうこともあります。そんなときは、すぐに歯科医院に連絡してください。
状況によっては修理できることもありますし、必要があれば再製作も可能です。



ちなみに、装置を入れる専用ケースを必ず持たせる・食事中は決まった場所に置くなど、なくさないための習慣づけも大切です。
7-5. 治療が終わったあとのメンテナンスは?



床矯正が終了したあとも、歯が元の位置に戻らないように“保定(ほてい)”という期間があります。
この期間は、リテーナー(保定装置)を使って、きれいになった歯並びを安定させます。保定装置も取り外し可能なので、床矯正の延長のようなイメージです。



この保定期間をしっかり守ることで、矯正の効果を長く維持できます。


8. まとめ:床矯正で後悔しないために親が知っておきたいこと
「床矯正ってよさそうだけど、本当にうちの子に必要なの?」「やっても効果がなかったらどうしよう…」



そんな不安を抱えるのは当然です。私たち矯正歯科医も、親御さんが納得してスタートできることを大切にしています。
ここで、床矯正を検討するうえで後悔しないために大切なポイントを、もう一度まとめておきます
✅ 1. 床矯正とは「あごの成長をサポートする矯正」
広義には、床装置と呼ばれる装置を用いて行う治療です。
狭義には、あごの骨の幅を広げて歯がきれいに並ぶスペースをつくる治療です。
床矯正=拡大する治療 というイメージが強いです。
✅ 2. ベストなタイミングは6〜10歳前後
あごの成長が活発な時期にスタートすることで、無理のない自然な矯正が可能になります。
ただし、個人差もあるので「気になった時が相談どき」。様子を見るだけでも大きな一歩です。
✅ 3. 親のサポートが成功のカギ
床矯正は、毎日の装着を続けることがとても重要です。
子どもが嫌がったり忘れたりするのは当然のこと。だからこそ、一緒に頑張る気持ちと寄り添う声かけが、治療の成功につながります。
✅ 4. 信頼できる歯科医院に相談を
ネットの情報だけではわかりにくいことも多いです。
「これは床矯正で対応できる?」「費用は?期間は?」といった疑問は、歯科医師に直接話を聞くのが一番安心です。



床矯正とは、あくまで床装置を用いた治療の総称です。つまり、たくさんある治療方法のひとつでしかありません。
床矯正にこだわり過ぎず、色々な選択肢の中から選ぶようにしてくださいね!
🌱 おわりに:子どもの未来のためにできること



歯並びは、見た目だけでなく「噛む・話す・呼吸する」といった体の基本的な機能にも影響します。だからこそ、今このタイミングでできることに目を向けることが、将来のお子さんの健康や自信につながります。この記事が、少しでもお子さんの歯並びに悩む保護者の方のお役に立てれば嬉しいです。










